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水圏の窒素起源推定ツール「窒素安定同位体比(δ15N)」

環境問題の1つに、水圏の窒素汚染が上げられます。 この窒素起源の解析ツールとして、窒素安定同位体自然存在比「δ15N値」が用いられています。

水圏の窒素起源は?

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3つに大別できます。

  1. 天然由来(雨水、山林土壌)
  2. 農業由来(肥料、家畜糞尿 等)
  3. 生活由来(工業・生活排水 等)

色々な起源の窒素が複合するため、窒素起源の解析は容易ではありませんが、最近では窒素安定同位体自然存在比(δ15N値)が多用され、窒素起源の解析に大きく貢献しています。

δ15N値は、物質により差があることが知られています。

文献によるδ15N値の測定範囲

δ15N値(‰) 研究者
大気 ±0
雨水 -8.0〜+2.0
土壌 水田土壌 +0.1〜+7.2 和田 et al.(1984)
畑地土壌 +1.5〜+8.1 米山 et al.(1986)
山林土壌 -4.0〜-3.0 和田 et al.(1984)
肥料 化成肥料 -8.0〜+0.8 木方 et al.(1984)
有機質肥料 +2.7〜+15.4 知念 et al.(1977)
排水 生活雑排水(日本) +8.2 吉田、小倉(1978)

δ15N値に他の成分や土地利用状況を加味すれば、窒素起源の推定に大いに貢献します。

例:測定項目と役割

1.窒素安定同位体自然存在比(δ15N値)

物質によって固有な値を示すため、窒素起源の推定に有効です。

2.窒素濃度(NH4-N、NO3-N、有機態窒素、全窒素)

窒素汚染状況を把握できます。形態別に見れば、窒素負荷源の推定意にも有効です。

3.COD(化学的酸素消費量)

水中の有機物量の指標になります。有機物は生活系や畜産系に由来する比率が高く、これらの負荷の指標になります。

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4.無機イオン濃度

起源によって増減する無機イオンに差が出る傾向があります。これを利用すれば汚染源の推定も可能です。

※対象水系の背景や集水域の土地利用状況を把握した上で、多角度的な考察が重要です。